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漫画版『ピンポン』最終話に散りばめられた伏線回収について

 スマイルが自然な笑みを浮かべていることなど、すぐにわかる伏線回収は置いといて。

 気付きにくそうだけど、素晴らしい伏線回収をしている箇所をいくつか。

 

 あと、それにまつわるちょっとした考察。

 

 

 ペコ特集号

 

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 スマイルが読んでいるペコの特集号。

 表表紙はヨーロッパにわたって卓球選手の一線級として活躍しているペコのこと。

 その裏は、どうやらペコが出ているらしい広告。これも実は伏線回収。

 

 

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 カルビーのCM出演が夢だと思っていたとおりに、お菓子のCMに採用されている。

 

 

 小泉宅にスマイルが来るらしい

 

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 スマイルが来ることを心待ちにしている小泉先生。

 

 

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 かつてのスマイルは、よその家で食事するのが苦手だと言って断った。

 ここに成長あるいは変化が見られる。

 

 

 小学校の先生になるスマイル

 

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 ドラゴンとの会話でスマイルは小学校の先生になるという。

 ここも伏線がある。

 

 

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 第一話でオババがスマイルにカブのコーチを依頼している。

 

 

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 もう一つ。

 「何百人って子供相手に教えてるとね… 嫌でも才能に鼻が効くようになるんだよ。」というオババの台詞も影響していると思われる。

 

 

 スマイルはオババと小泉に教わったものをさらに次の世代に伝えていこうとしているのだろう。

 ただし、本編との対比とはほんの少しずれている。完璧に対比させるなら、小泉が高校の英語教師だったように、高校の先生になる方が綺麗な対比となる。だが、スマイルの場合は小学校の先生になることを選んだ。そこに大きな意味がある。

 

 スマイルが卓球の楽しさを知ったのがおそらく小学生時代。

 その時の嬉しさをスマイルは覚えているのだろう。

 

 また、推論になるが、ペコとスマイルの関係がこじれ、寄り道を始めたのは小学時代か中学時代。

 そこでもし何かが違って理想の道を歩めていたら、今でももっと素晴らしい世界が広がっていたんじゃないか、とスマイルは考えているのではないだろうか。

 

 次世代のスマイルとペコが、今のスマイルと同じ道を歩まないように、その道を修正しうる場所として小学校の先生を選んだのではないだろうか。(この真意は最後の項目で記す)

 

 

 エブリバディ集合

 

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 スマイルが子どもたちに語った「エブリバディ、集合」。

 これは勿論──。

 

 

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 小泉がかつて部活で言っていた台詞。

 スマイルは小泉ポジションを意識的に受け継いだと表現されていると同時に、新しい卓球少年(さらに次世代のバタフライ・ジョー、あるいは次世代のスマイル)を見つける人生を歩むことが示唆されている。

 

 

 「眠いや」の台詞とあくびの意味

 

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 初読時、どうしてあくびで終わるのか、ピンと来なかった。

 推論に推論を重ねることになるけれど、これはものすごく深い描写を意味するあくびなのかもしれない……というのを以下。

 

 

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 卓球も英単語を覚えるのも、「どうせ死ぬまでの暇つぶしです」と答える月本。

 本編中、スマイルの「あくび」に重なりうるのはこの描写と台詞だけ。

 つまり、あのあくびは現在退屈であることが表現されている可能性が高い。

 

 「あくび」をした場所は海辺。

 おそらくだけれど、海辺は「海外」と「国内」の境界を象徴する場所として描かれている。

 コンウェンガの象徴が飛行機だったように、海外で活躍するペコとは違って国内に留まらざるを得ない二人を描写していると考えると、そこでの「あくび」は凄く意味がある。

 

 ペコと同じ舞台でまたあのような最高の戦いを演じられないことに退屈を感じているのではないだろうか。それが、実力不足のか、たんに機会がないだけなのか(ペコは海外にいる)はわからない。だけど、あくびは、スマイルの理想の卓球ができないことを描写しているように思える。

 

 

 そう──。

 彼は今、退屈なのだ。

 全力を出し切ることができず、憂いているのだ。

 

 それが何で満たされるのかはわからない。

 海外の向こうに旅立ったペコが帰ってきた時だけ、あくびが止まるのかもしれない。

 小泉がそうだったように、次の才能との出会いが彼の退屈を吹き飛ばすのかもしれない。 

 

 だが、現状退屈だと感じているこの描写は重い。

 海辺でかつてのライバルと卓球の話を絡めた後であくびをしてしまうという表現から推測するに、「退屈すらを感じない素晴らしい人生」=「ペコと肩を並べて海外で戦っているスマイル」こそが本当のスマイルの夢だったのではなかろうか。

 

 そこで、先ほど説明不足だった、小学校の先生にまつわる伏線回収に話を戻す。

 海外まで飛べなかった脆い羽根の小泉が、その夢をスマイルにたくして育て上げたように、次の世代のスマイル=海外で戦えるスマイルを育てるためにも彼は小学校の先生になったのではなかろうか。

 ……そう考えれば、最終話に散りばめられた描写の数々はピッタリとハマるように思える。

 

 

 どこか退屈しているスマイル。

 彼が思いを馳せるのは海の向こうで活躍するペコのこと。

 本編を通して素晴らしい体験をしてきたこのスマイルがここにいるからこそ、次世代には、ヒーローとともに並んで海を渡る最高の蝶が生まれるのだろう。

 

 

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